本コンテンツは、全身型重症筋無力症の患者さんにソリリス®を投与する際に必要な事項・留意すべき事項を全てまとめたものです。ソリリス®の投与前から、投与中まで、段階ごとにまとめています。また、関連する資料も入手することができます。是非ご確認いただき、先生の日常診療にお役立ていただけますと幸いです。
村井弘之先生
国際医療福祉大学医学部
脳神経内科学 教授(代表)
今井富裕先生
独立行政法人
国立病院機構箱根病院
院長
ソリリス®の投与を安全に開始するために、ソリリス®投与患者さん又はご家族(又は介護者)に対し、ソリリス®やソリリス®の副作用である髄膜炎菌感染症及び他の重篤な感染症のリスクについて十二分に説明してください。また、ソリリス®投与にあたっては、髄膜炎菌ワクチンの接種が必要であることを説明してください。
患者さんとそのご家族(又は介護者)に対して十分な説明を行うとともに同意説明文書に署名をいただいてください。
患者さんとご家族への説明は下記の3ステップでお願いします。
患者さんとご家族への説明の手順
患者さんとご家族への説明事項1:重要な安全性情報
ソリリス®は免疫系の一部を阻害するため、重篤な感染症、特に髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)への感染リスクが増加します。これらは、重大な脳の炎症や重度の血液感染症である敗血症の発症の原因となる可能性があります。実際に、ソリリス®投与により髄膜炎菌感染症を発症し、発症後短期間(24時間以内)で急速に症状が悪化して死亡に至った症例が報告されています。
これらの感染症により急死又は生命が危険な状態が生じる可能性、あるいは重大な身体障害が残る可能性がありますので、感染症に対しては至急に適切な治療を受ける必要があります。
これらの感染症のリスクを減らすための注意事項と、感染症が疑われる場合にするべきこと(以下を参照)を理解しておくことが重要です。
患者さんとご家族への説明事項2:髄膜炎菌感染症が疑われる注意が必要な症状
初期症状は、以下のような一般的な風邪やインフルエンザの症状と区別がつきにくい場合があるので注意が必要です。
・発熱 ・頭痛 ・吐き気、嘔吐 ・筋肉の痛み
その他、髄膜炎菌感染症には以下のような症状があります。
・錯乱(混乱して考えがまとまらない、物事を理解できない)
・うなじのこわばり(首の後ろが硬直しあごを傾けられない)
・発疹、出血性皮疹(赤や紫色の斑点状の発疹)
・光に対する過剰な感覚(光が異様にギラギラ輝いて見える、異常にまぶしく感じる等)
・手足の痛み
乳幼児においては、上記以外に下記の症状にも注意が必要です。
患者さんとご家族への説明事項3:髄膜炎菌ワクチン接種について
髄膜炎菌感染症のリスクをできるかぎり低下させるために、髄膜炎菌ワクチンの接種が必要です。
ステロイドや免疫抑制剤といった免疫に影響を及ぼす可能性のある薬剤の投与を受けている場合、そのような薬剤の投与を受けていない患者さんと同等のワクチンの効果が得られない可能性があり、髄膜炎菌感染症のリスクが高まるおそれがあります。
ソリリス®やソリリス®の副作用である髄膜炎菌感染症及び他の重篤な感染症のリスクについての患者さんとご家族への説明には、患者さん用パンフレット「ソリリス®治療で気を付けてほしいこと」をご利用ください。また、患者さんには「患者安全性カード」を提供し、ソリリス®投与中はこのカードを常に携帯する必要があることを説明してください。
監修者コメント:ソリリス®投与により、髄膜炎菌感染症を発症するリスクが高まり、死亡例も認められています。このため、ソリリス®投与にあたっては、患者さんとご家族に対して、安全性に関する情報を適切に提供する必要があります。本コンテンツでは、ソリリス®投与に際して、患者さんとご家族に説明するべき事項を網羅しました。また、説明の際に必要なパンフレット等の資材も掲載いたしました。是非お役立ていただければと思います。