2022年5月に重症筋無力症の診療ガイドラインが改訂されました。その主な改訂ポイントを3つの解説動画にまとめ、3名のエキスパートの先生方よりご紹介いただきます。
Part Iでは、重症筋無力症の病因、診断・評価・病型分類に関する改訂ポイントや最新の疫学情報を解説いただきます。
Part IIでは、昨今の研究データに基づいて提示された成人期発症重症筋無力症の新たな治療指針や、病型ごとの治療アルゴリズムを中心にご紹介いただきます。
Part IIIではLEMSの病因、診断、症状、疫学、予後などの基本情報や治療指針について解説いただきます。
Q1
重症筋無力症(MG)の病原性自己抗体は、アセチルコリン受容体(AChR)抗体とLDL受容体関連蛋白質4(LRP4)の2つである?
A
×2022年現在、MGの病原性自己抗体として認められているのは、AChR抗体と筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体の2つです。LRP4抗体は、疾患特異性が低いことなどから、現時点では「病原性自己抗体とは断定できない」と判断されました。[p.2のCQ 1-1より]
Q2
MG診断基準2022では、MGと診断される「Definite」とMGを強く疑う「Probable」の基準が設定された?
A
○MGと診断される「Definite」に加えて、「Probable」の基準が設定されました。病原性自己抗体や神経筋接合部障害を十分には証明できなくとも、“MGの症状が少なくとも1つ認められる”、“血漿浄化療法が有効である”、“他の疾患が除外できる”という基準を満たせば、「Probable」(MGが強く疑われる)と判定することとなりました。[p.20のCQ 3-1より]
Q3
成人MGは6つのサブタイプに分類できる?
A
眼筋型
①眼筋型MG(OMG)
Q4
早期発症MGと後期発症MGの発症年齢の境界は60歳である?
A
×50歳を境界に、胸腺腫がなく発症年齢が50歳未満は早期発症MG、発症年齢が50歳以上は後期発症MGと分類されます。[p.31のCQ 3-3より]
Q5
MM-5mgの早期達成に「早期速効性治療戦略」は有効である?
A
○MM-5mg の早期達成に向けて、非経口速効性治療(fast-acting treatment; FT)を早期から積極的に行う早期速効性治療戦略(early fast-acting treatment strategy; EFT)が有効とされています。[p.50のCQ 5-1-1より]
Q6
非胸腺腫MGのうち、後期発症MGでは胸腺摘除の有効性が期待できる?
A
×胸腺摘除の有効性が期待できる非胸腺腫MGは早期発症MGで、オプションでその施行が検討されます。[p.47の病型ごとの治療アルゴリズムの概要、p.57のCQ 5-2-1より]
Q7
副作用などにより十分な治療の継続が困難な症例は、難治性には含まれない?
A
×難治性MGとは、複数の経口免疫治療薬による治療あるいは経口免疫治療薬と繰り返す非経口速効性治療を併用する治療を一定期間行っても、「十分な改善が得られない」ことに加えて、「副作用や治療に伴う負担のため十分な治療の継続が困難である」場合も含まれます。[p.50のCQ 5-1-1より]
Q8
FTを行っても十分な治療効果が得られない場合に推奨されているのは、分子標的治療薬である?
A
○FTを反復しても効果が得られない難治性の症例に対しては、分子標的治療薬が選択肢とされています。分子標的治療薬の1つとして、AChR抗体陽性の難治性全身型MGにはエクリズマブが推奨されています。[p.47の病型ごとの治療アルゴリズムの概要、p.77のCQ 5-7-1より]