Complement

⽣体防御における補体の役割とMGでの関与

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テキスト

1.イントロ

オープニング

補体とは、いったいどのようなものでしょうか。補体系には多くの分子が関与しており、その作用機序や活性化機序はとても複雑です。近年、補体が関連するさまざまな疾患の病態が解明されるにつれ、補体と補体系に関する理解は急速に進展しています。

そこで今回は、正常状態での補体の本来の役割、すなわち、生体防御において補体が果たす役割や、補体の活性化機序、さらには補体系を抑制する制御因子の機能と役割についてご紹介します。

2.本論

補体とは

補体は、抗体の殺菌作用を補完する血清中の成分として発見され、補体(complement)と名づけられました。補体には大きく9つの成分があり、C1~C9と表されます。これらの補体成分を含む補体系は、40種以上の血清、または細胞膜タンパク質から構成される複雑なシステムです。

補体は自然免疫系の重要な要素の1つであり、カスケード反応を起こすことにより、生体防御において多くの役割を果たします。

補体と生体防御①

それでは、補体の生体防御における役割についてみていきましょう。
補体には大きく3つの役割があり、1つ目として、侵入してきた微生物や異物に抗体とともに結合して標識すること、すなわちオプソニン化することにより、食細胞の貪食作用を亢進します。また、異物排除とともに免疫複合体の除去も行います。

補体と生体防御②

2つ目として、補体が活性化する過程で生成されるC5a、C3a、C4aなどが、血管から局所への白血球の動員を促進し、同時に白血球を活性化させます。

補体と生体防御③

3つ目として、補体の活性化により最終的に生成されるC5bがC6~C9とともに膜表面に膜侵襲複合体、MACを形成し、微生物などを直接破壊し、融解します。
このように、補体は生体防御において多くの役割を果たしますが、それでは、補体はどのような機序で活性化されるのでしょうか。

補体の活性化機序①

補体は、古典経路、レクチン経路、第二経路の3つの経路により活性化されることがわかっています。 古典経路は、抗体が抗原を認識し、抗原抗体反応することによって始動します。レクチン経路は、糖鎖結合性タンパク質のレクチンが、病原体の表面の糖鎖を認識することによって始動します。そして、第二経路は、C3が活性化することによって始動します。

補体の活性化機序②

古典経路では、まず、C1qが抗原抗体複合体に結合することによってC2、C4が活性化されます。その後は、レクチン経路、第二経路とも共通ですが、C3転換酵素によってC3aとC3bが生成され、さらにはC5転換酵素によってC5が開裂し、C5aとC5bが生成されます。そして、C5bはC6~C9とともに膜侵襲複合体、MACを形成します。

補体の活性化の過程で生成された補体成分の機能と役割についてみてみると、近位補体のC3aは弱いアナフィラトキシンとして炎症を促進し、C3bはオプソニン化および免疫複合体除去に関与します。 また、終末補体のC5aは強力なアナフィラトキシンとして作用し、C5bはC6~C9とともに膜侵襲複合体、MACを形成し、病原体の細胞膜を破壊し、直接的な細胞融解作用を引き起こします。

補体系の抑制系制御因子

一方、血清中、または細胞膜上には、補体系を抑制する種々の制御因子が存在します。細胞膜上で機能するCD46やCD55はC3転換酵素を解離・失活させ、CD59はC5b~C8と結合し、C9の重合を阻害することによりMACの形成を阻害します。これらの膜タンパク質は、体内のほとんどすべての細胞に存在し、補体による侵襲が自己細胞に向かないようにコントロールしています。

3.まとめ

まとめ

今回は、正常状態での補体の本来の役割、補体の活性化機序、補体系を抑制する制御因子の機能と役割についてご紹介しました。 補体は、活性化の過程で生成される各補体成分が、生体防御において重要な役割を果たしていること、その一方で、自己細胞膜上には補体系を抑制する制御因子が存在し、補体による自己細胞の破壊を阻止していることがおわかりいただけたと思います。 次回は、重症筋無力症の病態において、補体がどのように関わっているかについてご紹介します。