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テキスト

1.イントロ

オープニング

補体は、重症筋無力症で神経筋伝達障害が引き起こされる機序の1つとして大きな役割を果たしており、シナプス後膜に膜侵襲複合体、MACを形成し、運動終板を破壊します。ソリリス®は、こうした補体の働きを抑制する抗補体薬で、補体成分のC5に特異的に結合する抗C5モノクローナル抗体です。それでは、ソリリス®は、どのようにして補体の働きを抑制するのでしょうか。

今回は、抗アセチルコリン受容体抗体陽性重症筋無力症における補体の活性化とソリリス®の作用機序、ソリリス®による髄膜炎菌感染症の発症リスク、重症筋無力症の病態でのC5阻害の意義、重症筋無力症患者におけるソリリス®の遊離C5阻害作用などについて、解説します。

2.本論

抗AChR抗体陽性MGにおける補体の活性化とソリリス®の作用機序

重症筋無力症では、アセチルコリン受容体に自己抗体である抗アセチルコリン受容体抗体が結合することにより、補体の古典経路が活性化し、最終的にC5が開裂してC5aとC5bが生成されます。そして、生成されたC5bがC6~C9とともに膜侵襲複合体、MACを形成し、運動終板を破壊することにより、神経筋伝達障害が引き起こされると考えられています。

ソリリス®は、このC5に特異的に結合し、

C5からのC5aとC5bへの開裂を阻害することにより、過剰なMACの形成を抑制し、運動終板の破壊を阻止します。

ソリリス®による髄膜炎菌感染症の発症リスク

なお、MAC には病原菌の細胞膜を破壊する作用があり、髄膜炎菌などの莢膜をもつ菌に対する免疫機能を担っています。そのため、ソリリス®の作用により、髄膜炎菌に対する免疫機能が低下すると、髄膜炎菌感染症の発症リスクが上昇することが推測されています。

一方、ソリリス®は近位補体には作用しないため、C3 が関与する一般的な細菌に対する免疫機能には影響がないと考えられています。

MG病態でのC5阻害の意義①

重症筋無力症の病態におけるC5阻害の意義については、アセチルコリン受容体抗体を注入し、重症筋無力症を誘発したラットを用いた実験で示されています。
アセチルコリン受容体抗体注入ラットでは、1日目から臨床スコアの上昇が認められ、2日目から3日目にかけて重症化します。

しかし、アセチルコリン受容体抗体投与前に抗C5抗体を投与すると、臨床スコアが有意に抑制されました。

MG病態でのC5阻害の意義②

これらの重症筋無力症誘発ラットの筋組織を抗C9抗体と運動終板を標識するブンガロトキシンを用いて二重染色すると、運動終板におけるC9の沈着が認められました。

一方、抗C5抗体投与ラットでは、C9の沈着が低減することが示されました。


さらに、重症筋無力症誘発ラットでは、筋組織中に単球やマクロファージの炎症性浸潤が認められましたが、

抗C5抗体投与ラットでは、炎症が抑制されることが示されました。

このように、重症筋無力症の病態では、C5を阻害することにより、運動終板におけるC9の沈着、すなわちMACの形成が抑制され、筋組織における炎症の軽減、さらには筋力低下の症状の緩和がもたらされることが示唆されます。

MG患者におけるソリリス®の遊離C5阻害作用

それでは、抗C5モノクローナル抗体のソリリス®を重症筋無力症患者さんに投与した場合を見てみましょう。

62例の重症筋無力症患者さんに対してソリリス®を投与したところ、57例の患者さんで投与開始1週目より血中C5濃度が低下し、終末補体が完全に阻害されたことの指標となる0.5μg/mL未満に維持されました。このことから、重症筋無力症患者さんでは、ソリリス®により投与期間を通じて持続的にC5が阻害されることが示唆されました。

3.まとめ

まとめ

今回は、抗補体薬のソリリス®が、抗アセチルコリン受容体抗体陽性の重症筋無力症において神経筋伝達障害を引き起こす補体の活性化をどのように抑制するのか、また、重症筋無力症の病態におけるC5阻害の意義、さらにはソリリス®によるC5阻害などについてご紹介しました。

これまで見てきたように、補体は本来、生体防御において重要な役割を果たす、重要な免疫システムの1つですが、重症筋無力症の病態では、補体の活性化による運動終板の破壊が神経筋伝達障害を引き起こします。ソリリス®は、補体成分のC5に特異的に結合してMACの形成を阻害することにより、運動終板の破壊を阻止し、神経筋伝達障害を抑制します。こうした重症筋無力症の病態に深くかかわる補体をターゲットとしたソリリス®による抗補体療法は、重症筋無力症に対する有望な治療選択肢となりえ、期待がもたれています。

ソリリス®の第Ⅲ相臨床試験「REGAIN 試験」とその継続試験である「REGAIN 継続試験」の結果は、こちらの動画をご参照下さい。